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小型移動式遠隔測定システム(Telemetry System)

HAII(水資源・農業情報研究所)


小型移動式遠隔測定システム(Telemetry System)とは?遠隔測定システムとは、物理、化学、又は生物学上の値を測定し、所定の条件の下、所定の場所に、自動的に測定値を送信する装置です。測定する値、又 はデータは、リスクレベル、温度、湿度、酸・アルカリ値、水中の酸素量などとなっています。また、写真や、作動状態など装置自体のデータも送信することが できます。
小型移動式遠隔測定システムは、設置しやすく、設置にかかる時間が短く、容易に取り外し・移動することが可能な遠隔測定システムです。

プロトタイプは日本のField Server
小型移動式遠隔測定システムは、装置を用いて遠隔操作に よる測定をおこない、データを送信するという、日本の政府のNARO(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)が研究・開発した“Field Server”の構想を受けたものです。Field Serverの呼称の由来については、まず、日本で使われている基礎通信システムを理解しておかなければなりません。
日本は技術の進歩した国ですが、通信についても例にもれず、日本には、多様な形態の通信サービスが存在します。中でも、日本国内で大変多く使われている形 態の1つは、WI-FI、すなわち、Wireless LANです。これは、私たちがインターネットで作業をするのと同様の通信形態ですが、ワイヤレスなので、容易にインターネット接続・使用ができます。です から、コンピュータを使うのではなく、携帯電話、その他のデータ送信装置でもよいのです。このシステムの長所は、直接インターネットシステムに接続できる こと、全世界で使用されている標準システムであること、そして、IPシステムを通じて直接、装置への通信形態を定められることです。このシステムでデータ の送受信をする装置は、データ送受信能力に優れているため、多様な用途のための開発をおこなうことができます。このネットワークは、日本だけでなく、韓国 でも使用されていますが、現在、タイでは、True Move社がWI-FIシステムの開発・実用化を進めています。この装置を使うと、コンピュータと同様、インターネットにアクセスすることができ、画像、 音声、動画などのデータを送信することもできます。つまり、この装置は、それ自体がServerとして機能するものですが、室内に設置する必要なく、屋外 で使用し、フィールドでデータの送受信をすることができるものなのです。それが、Field Serverの呼称の由来です。値やデータの測定及び送信の他、ビデオカメラを取り付けることもできるので、写真を撮影し、ビデオ映像をインターネット上 に送信することも可能です。インターネットに接続さえできれば、ユーザはどこにいても様々なデータを閲覧したり、直接Field Serverに指示を送ったりすることができます。


タイへの応用のための開発
2003年、日本のNAROは、諸国の団体が参加するAPAN学 術会議において、Field Serverを提唱しました。小型で、簡単に持ち運びができ、様々な形態に応用でき、更に価格の安いこの装置は、効率という点で注目を集めました。そこ で、国家エレクトロニクス・コンピュータ技術センター(NECTEC)は、このField Serverの技術を導入し、タイ国内での使用に見合った実用化のための試験をおこないました。しかし、タイでは、日本のようにWi-Fiの通信サービス が普及しているわけではなかったため、データ送信を適切な方法に変更しなければなりませんでした。タイで、一般に使われている遠隔通信システムは、専用に 割り当てられた周波数であるVHF又はUHF波の形態でのデータ送信ですが、現在、帯域には限度があり、多側面の用途には向いていません。そこで、 NECTECは、携帯電話網を用いた通信、すなわち、General Packet Radio Service(GPRS)を採用することにしました。この通信サービスは、現在、携帯電話によって一般に普及しており、また、携帯電話網の拡大と基地局 の増加により、大部分の地域を包括することができ、接続数が制限されることもありません。更に、多様な使用形態の開発をおこなうことが可能です。品質は、 常に管理されており、ネットワークの拡大も図られているため、これは、使用に適した形態ということができます。しかし、一方で、電波の届かないところでは データ送信ができないなどの欠点もあります。したがって、電波の届かない地域でのデータ送信をサポートするため、多様な形態で電波の届く範囲の拡大を図っ たり、他の通信システムを応用したりするなど、使用にかなうよう、他の通信システムも開発していく必要があります。

システムの機能
小型移動式遠隔測定システムの機能はシンプルなもので、主に、一般に使用されている分かりやすい接続システムを使用しています。機能は、装置の性質上、次の3つに区分することができます。

  1. 測定装置 これは、様々なタイプの測定器より成るもので、標準タイプの測定できる値は、0〜5 V、すなわち、4〜20 mAとなっています。現在は、各種測定器の製造者があり、種類も多く、様々な用途に取り入れることができます。小型移動式遠隔測定システムは、標準のタイ プに加え、あらゆる種類の測定器を取り付けることが可能です。現在、使用されている測定器は、温度、湿度、大気酸性度、照度、及び水位の測定器ですが、精 度や正確さは、各製造者の製造・販売する測定器によって異なるため、使用にかなった十分な正確さがあり、かつ、価格が高過ぎない適正価格の測定器を選んで 使用することができます。また、降雨量の計測ができるよう、Tipping Bucketタイプの降雨量測定装置に接続できる装置の開発もおこなわれています。
  2. 機能制御・データ送信装置 これが装置の心臓となります。全ての機能の制御装置は、マイクロコントロールとなっており、独自のプログラムを開発・作成する ことにより、需要に応じてシステムを改造・改変することが可能です。記録装置には時刻システムが組み込まれており、また、所定の指示をすることもできま す。更に、RS232標準の形態のデータをGPRS上で送信したり、データを装置のFlash Memoryに書き込み、ユーザがMemoryを取り外して後から読み取ったりすることも可能です。制御装置の機能には、データ測定の頻度設定もあり、1 分毎、10分毎、1時間毎、1日毎など、設定した時間になったらすぐにデータを送信することもできます。得られたデータは、コンピュータに送信され、すぐ に結果が分析・表示されますが、この時に必ず測定した時刻が表示されるようになっています。ユーザは、コンピュータをシステムに接続し、直接データを閲覧 することができます。このデータは、特別なプログラムを使う必要なく、Excel上で表やグラフにするなど、すぐに使用することができます。
  3. 配電装置及びシステム防御装置 このシステムでは、12Vの電力を使用しているため、様々な電源での使用が可能です。例えば、家庭の220 V ACの電源から変圧器で12V DCに変換したり、自動車のバッテリーを使用したりすることもできます。将来的には、システムの電力使用を低減するための開発をおこない、小型ソーラーパ ネルを搭載することも考えられています。また、装置が小型なので、防水プラスチックに充填し、屋外に設置して使用したり、屋内に設置してメインテナンスの 便宜を図るということもできます。

この小型移動式遠隔測定システムは、携帯電話網GPRSを通じてサーバ・コンピュータにデータを送信し、サーバ・コンピュータ上でデータを受信し、 確認してからデータベースに保存し、使用するというものです。 したがって、結果は、Web siteや携帯電話のWAP page画面など、様々な形態での表示が可能となり、統計的な数値データ、グラフ、表として、求める場所や時間のデータを閲覧することができます。また、 装置の状態を確認することもでき、インターネットを通じてGISの形態で結果を表示することもできます。

技術データ


  • バッテリー内蔵のマイクロコントロールPIC 18F458及びReal Time Clockシステムによる機能制御。
  • Analog to Digital 10 bitの信号変換器8回路を使用。Analog to Digital 12 bitへの増量可。個数は無制限に増量可。
  • 降雨量測定器に接続するための計数回路1個あり。
  • 温度及び湿度測定器を差し込むためのポート内蔵。
  • TTL 5Vの装置制御のためのInput Output(8個)。個数は無制限に増量可。
  • RS-232(9ピン)のデータ送信。コンピュータに直接接続可。
  • Compact FlashタイプのFlash Memoryへのデータ記録装置あり。
  • 携帯電話網GPRSによるデータ送信。GPRS Modem使用。AIS、DTACのSIMに対応。アンテナの形態を変更することによる遠距離通信
  • 使用電力は9〜30ボルト・直流又は交流に対応。12 V DC 500 mAでの使用も可。

 

どんな種類の業務に適していますか?
データを測定したら すぐ自動的にデータを送信したい業務で、様々な結果表示方式があり、Web Siteを通じた業務に適しています。例えば、装置が紛失しないよう防止する管理者のいる区域で、電力及び携帯電話の電波がある場所などです。ただし、こ れらのいずれかが欠けていたとしても、代わりの装置を使うことで、需要に応じた測定器を設置することができます。尚、データの正確さや機能、効率は、使用 する測定器の品質によって異なります。

どんな場所に設置していますか? また、どのような効果がありますか?
小型移動式遠隔測定システムは、2004年に導入され、リアルタイム・自動方式(Automatic & Real-Time)の水位・降雨量データの必要な灌漑局のプロジェクトにおいて、設置・試験がおこなわれています。
例えば、ペッブリー流域、プラーンブリー流域、チャオプラヤー流域、チャンタブリー流域、ピン河流域などのプロジェクトでは、まだ遠隔測定システ ムが使用されていませんが、設置・使用試験により、問題点が発見されており、そうした多くの経験を積みながら、より良く使用できるよう改善されていく予定 です。

 

成功例の1つには、2005年のラヨーン県地域における時間毎の降雨量データ送信のための小型移動式遠隔測定システムの設置があります。これは、旱 ばつの問題の解消を目的としたもので、3日間で13ヶ所に測定ステーションが設置されました。1ヶ所のステーションにかかった時間にすると、3時間となり ます。また、設置後すぐにデータの送信ができたため、地域内の降雨量データを迅速に把握することができました。データベースは統計データとしてまとめられ ており、過去に遡って閲覧することが可能です。更に、携帯電話のショートメッセージシステム(SMS)による警報を送信することもできます。

継続的開発
現在、小型移動式遠隔測定システムは、目的にぴったり合った形態を開発している段階です。 また、様々な新技術も応用しています。それには、例えば、双方向のデータ送受信による端末管理、エネルギー節減型の装置の開発による小型ソーラーパネル搭 載などがあります。また、測定器の効率向上、更に細かい信号変換、測定器ポートの増設もおこなっています。小型移動式遠隔測定システムの研究・開発及び製 造は、タイ人自身がおこなうということを重視し、国内で適切な使用ができるようにしています。それにより、国家の水資源マネジメントにおいて、ユーザであ る担当官が正しいデータをすばやく、安定的に入手できるようになります。

 

小型移動式遠隔測定システムのプロジェクトにおける装置の接続及び機能

 
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